ロンドンレポート|FOCUS/25で見つけた最新インテリア
毎年秋、ロンドン・チェルシーハーバーで開催されるインテリアデザインイベント 「FOCUS」。135を超えるショールームに加え、期間限定のポップアップ展示がDesign Centreのひとつ 屋根の下に集結します。最新のファブリックや壁紙、照明を直接体感できるこのショーケースは、インテリアに携わる人々の"情報ハブ"ともいえる場です。
現地に足を運び、会場から見えてきたインテリアのキーワードから今回は3つをピックアップ。マナトレーディングが取り扱うエディターブランドの2025年秋冬新作コレクション も先取りしてご紹介します。
Design Centreのエントランス。今年のイベントイメージカラーであるブラウン・オレンジ・ブルーを基調に美しく彩られていました。
1. 物語をまとうインテリア
インテリアに歴史や文化、そして物語を取り込むことで、空間は単なる美しさを超え、住まい手の価値観や感性を映し出す存在へと変化します。飾られる装飾やテキスタイル一つひとつには背景があり、それを知ることで空間に奥行きと意味が宿ります。流行やスタイルを追うだけではなく、「共鳴できるもの」「愛せるもの」を選び取ることこそが、いま注目されるインテリアの在り方のひとつでした。
BLACK editionの 新作コレクション「ISTORIA」は、かつて英国のアートコレクターが世界中を旅して集めた装飾品を飾っていた邸宅から着想を得たコレクション。なかでも、神話上の生き物を描いた「Chimera」の壁紙は、幻想的なモチーフとシルクのような光沢が相まって存在感を放ち、部屋全体をギャラリーのような空間へと昇華させていました。
またMORRIS&Co.からは、ウィリアム・モリスやジョン・ヘンリー・ダールが未完成のまま残したスケッチを、現代のデザインチームがその意思を受け継ぎ完成させたコレクション「THE UNFINISHED WORKS」が登場。 歴史と現代が重なり、空間に時を織り込みます。
2. 1970~80年代のリバイバル
近年、1970~80年代を想起させるデザインや装飾のリバイバルが進んでいるなか、FOCUSでもその流れは現れていました。ノスタルジアを喚起する要素を取り込みながらも、彩度を落とした色づかいや、真鍮やガラスなどの素材との組み合わせで現代的にアップデートされている点が特徴です。
(左上・右上)GASTON Y DANIELA (下)参考写真 David Hunt Lighting
また、柄を重ねる「パターン・オン・パターン」の提案も多く、エネルギッシュな空気感を作り出します。大胆な組み合わせであっても、同系色でまとめたり、同一コレクション内で巧みにレイヤードしたりすることで、統一感と遊び心が両立しています。
ROMOの「AUBIN」は2025年春夏コレクションとして 発売早々、世界中で人気を集めトップセラー入りしたコレクション
また、装飾的ディテールへの回帰も注目ポイント。とりわけ、ボリューム感のあるフリンジトリムは、多くのブランドがクッションに取り入れていました。シンプルなインテリアに一点加えるだけでもアクセントを生み出すことができ、日本の住空間でも応用しやすそうな要素です。
(左)参考写真 Paolo Moschino (右)VILLA NOVA
3. Earthy Luxury-- アーシー・ラグジュアリー
参考写真 FLEXFORM
自然素材やアースカラーを基調とし、派手さではなく自然体の豊かさや心地よい居場所を感じさせるスタイルです。ウッドやストーンといった素材がもたらす素朴さに、ウールやファー、ベルベットなどの上質な質感を重ねることで、贅沢さと温もりを添えます。
Mark Alexanderのショールームディスプレイ では、モヘア素材のファブリック を用いたソファにテクスチャー豊かなアースカラーのクッションを合わせ、落ち着きの中に高級感と洗練を兼ね備えたコーディネートが印象的でした。
Mark Alexanderのヘッドデザイナーを務めるMark Butcher氏 は、ブランドを象徴する言葉のひとつとして 「Warm Minimalism(ウォーム・ミニマリズム)」を挙げています。過度な装飾を排しつつ、人のぬくもりを感じさせる要素が空間をひとつにまとめあげ、自然とのつながりを大切にする世界観と調和します。
先日発売された TECIDOコレクションでもEarthy Luxuryに取り入れやすい壁紙を収録しています。 「NATURAL」と「PLAYFUL」スタイルに収録している「ネスト」は、くすみのあるグレイッシュトーンに繊細なテクスチャーを重ね、静的な奥行きを与えるデザイン。スタイリングを支える壁紙として活躍してくれます。
(左)壁紙 / ネスト NEST201002808(右)壁紙 / ネスト NEST201001313
多様なスタイルが交錯していた2025年の「FOCUS」 。そのどの表現にも一貫していたのは、「現代の人が心地よく生きるための空間」という視点でした。
歴史や文化を映すアイテム、そして自然を感じるカラーや質感豊かな素材は、空間に奥行きをもたらし、そこに暮らす人に寄り添います。ロンドンでの出会いは、日本の空間づくりにもヒントを与えてくれるでしょう。